JOURNAL #4

Café Grumpy 創業者
Caroline Bell & Chris Timbrell

ブルックリン生まれのロースターカフェ。
お客さんにコーヒーをもっと知ってほしいし、楽しんでもらいたい。

 

knot caféは、2015年7月、北野天満宮のお膝元という由緒ある地に縁あってオープンしました。
JOURNALの前回までは、同じ北野にあるお店とのつながりをご紹介してきましたが、今回はニューヨークのロースターカフェ、Café Grumpyの創業者、Caroline BellとChris Timbrellの二人のインタビューをお届けします。
knot caféでも人気のカフェラテや、マキアートなどエスプレッソ系のコーヒーのメニューは、Café Grumpyの豆を使っています。
カフェをオープンするにあたり、元々輸入業で携わっていたニューヨークで面白いと思ったもので何かできないだろうかとの考えから、店名のknot=結ぶ、というコンセプトには京都とニューヨークをつなげるという意味もありました。様々なヒト・モノ・コトが交差して生まれたカフェ。これからも縁を自然に結んでいくお店を目指していきます。

 

Café Grumpyを開業されたのは2005年でしたよね?

はい、そうです。ブルックリンのグリーンポイントという場所にCafé Grumpyの1号店をオープンさせたのが2005年でした。それ以前は、キャロラインはアート界で仕事をしていて、レストランで働いていた経験もあります。クリスは金融と再生可能エネルギー業界で仕事をしていました。ある時、二人でコーヒーを飲みに出かけたんですが、お互いが気に入るようなお店を見つけられなかった。それで自分たちのコーヒーショップを作ることにしたんです。当時はまだ静かだった一画に、たった一軒ぽつんとカフェができました。Café Grumpyは当初こそ苦戦したものの、その後は順調に成長を続け、現在では自社焙煎所のほかにカフェがマンハッタンとブルックリンに8軒、マイアミに1軒を展開するまでになりました。事業が大きくなっても変わらず、私たち二人で経営しています。
二人ともブルックリンで犬と猫とモルモットと一緒に暮らしていて、キャロラインは、Q Grader(*1)の資格も持っているんですよ。

 

 

立ち上げ当初はかなりご苦労があったのですか?

そうですね。最初は本当に一軒のカフェから始めたわけですから、小さなビジネスを維持していくというのは、どの業界においても挑戦的なことです。自分たちの生活バランスを保ちつつ常にポジティブな姿勢でいることはなかなか難しい。グリーンポイントの最初のお店をオープンした一年目はお客さんの入りがあまりよくない日が続き、経費を払っていくだけでも大変でした。そうして私たちはここで諦めてお店を閉めるか、それとももっと多くの集客が見込めるマンハッタンにも思い切ってお店を開くか、という一か八かの決断をしなくてはなりませんでした。大きな賭けでしたが私たちはリスクを承知で心を決め、2006年にマンハッタンに新たなお店をオープンしたんです。幸いなことに、新店は開店初日からお店の外にまで行列ができるほどの最高の出だしを迎えることができました。

 

その後は順調に店舗を増やしていらっしゃいますよね。仕事上、大切にしているのはどんなことですか?

私たちはいつもコーヒーに対して真剣に向き合ってきましたが、一方で自分たちを追い込みすぎないというか、自身の内面についてはあまりシリアスになり過ぎないよう心がけてきました。その考えはCafé Grumpyのアイコンビジュアルにも表われています。ロゴとキャラクターアイコンは、キャロラインの兄弟のアンドリューがデザインしたんですが、来店したお客さんたちがイージーで気楽な気持ちになれるようなものにしたかったんです。店名でもある「Grumpy」は「無愛想な」とか「不機嫌な」といった意味ですが、無愛想な顔は、朝、コーヒーを飲む前の寝起きの顔をイメージしています。お陰様でこのキャラクターアイコンは多くの人に愛されて、カップやTシャツ、トートバッグなどさまざまなキャラクターグッズとして展開されています。
また、新しい土地にお店をオープンする際には、その地域性や特性を考慮してそれぞれ店構えや内装などのデザインに個性を持たせるように設計してきました。
そして何より重要なのは、お客さんに飲んでいただくコーヒーについて、そのコーヒーがどのようなものなのかを常にわかるようにしておくということです。豆の生産地はどこか、どのように焙煎されたものか、淹れ方はどういう方法かをきちんと明らかにすることで、お客さんは自分のカップの中にあるコーヒーについて理解を深めることができるようになります。お店を訪れてくださった誰もが、そんなコーヒー体験を楽しんでもらえるようにしたいのです。
私たちは、数少ないブルックリンのスペシャルティコーヒー店としてニューヨークで生き残り、それぞれの地域でコミュニティーを築き上げていけるよう今後も努力していきます。

 

 

さて最後に、お二人はコーヒー業界の今後と未来について、どのようにお考えですか?

コーヒー業界は今とても大きな成長を遂げていると思います。それを見ているのは面白くはあるのですが、個人ビジネスとしては、あらゆる街角で新店舗をオープンできるような大きな資本と競争していくのはチャレンジングなことでもあります。とにかく競争の激しい市場であることは間違いないでしょう。
私たちは、コーヒー生産者とコーヒーショップの関係をさらに深めていきたいと願っていますし、今後、コーヒー業界の喫緊の課題である気候変動(*2)について、より多くの研究がなされることを期待しています。

NY、ブルックリンの閑静な住宅街の一画に2005年にオープンした1号店。Café Grumpyはここからスタートした。

 

Café Grumpy
http://cafegrumpy.com/


*1 米国スペシャルティコーヒー協会が定めた基準・手順に則ってコーヒーの品質(Quality)を評価(Grading)ができると CQI(Coffee Quality Institute)が認定したコーヒー豆鑑定技能者のことで、世界で唯一の国際認定資格。正式にはLicensed Q Graderという。
*2 コーヒーの消費量が年々拡大している一方で、コーヒー豆の種類によって適応する気候帯が異なるため、生豆栽培は気候変動により大きな影響を受ける。気温や降水パターンの変化、干ばつ、病害虫の被害など生産農家を取り巻く環境は一層厳しいものになっており、生産量や価格への影響も取り沙汰されている。